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法務DXの動向 ―ChatGPTの出現によるリーガルテック市場の変化―【イベントレポート前編】​

企業の法務やリスクマネジメントにおいて、コンプライアンスは極めて重要です。また、コンプライアンスを徹底することは、企業の成長にもつながります。本記事では、レクシスネクシス・ジャパン株式会社が2023年5月に開催した“LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ発売記念イベント コンプライアンスは企業をどう成長させるか?”の内容をご紹介し、コンプライアンスやリーガルテックを自社の成長戦略に活かすためのヒントを全3回にわたってご紹介します。

ChatGPTなどのAIやリーガルテックの活用や、法務力が強い企業の担当者と法律専門家による「企業価値向上に直結する法務力強化の秘訣」に関するパネルディスカッション、リーガルテックのメリットなど、ぜひ自社のコンプライアンス対策にお役立てください。また、機能追加された『LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ』を活用した課題解決の手法もお伝えします。

今回の前編では、レクシスネクシス・ジャパン株式会社代表取締役社長のパスカル ロズィエによる「法務DXの動向 ―ChatGPTの出現によるリーガルテック市場の変化―」をお届けします。

登壇者プロフィール

レクシスネクシス・ジャパン株式会社

代表取締役社長 パスカル ロズィエ

北アジアにおけるレクシスネクシスのビジネスを統率。大手海外メディアやテクノロジー企業において、金融情報サービスなどのリーダーシップポジションを歴任。20年にわたるキャリアの中で、最先端のテクノロジーやデータソリューションを提供することで様々な領域でクライアントのイノベイティブなビジネスの創造を支援。2023年1月より当社、代表取締役に就任。フランス出身、フランス語、英語、日本語のほか、ドイツ語など多言語が堪能。

  

グローバルな視点で“法”を捉える

私は、2023年1月にレクシスネクシス・ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任し、日本と韓国を含む北アジアでのレクシスネクシスの事業を統括しています。

最初に私の経歴をお話ししますと、中米をルーツに持ち、ドイツで生まれ育ち、国籍はフランスです。15年間にわたり、アメリカの企業で、フィンテック・金融情報・ビッグデータ・コンプライアンスの領域でキャリアを築いてきました。

元々、日本の文化や歴史などに深い興味を持っていて、パリの大学で日本文化を専攻していました。そして、文部科学省に勤めたことをきっかけに、1999年に初めて日本を訪れて、横浜で2年間ほど働きました。

そのような国際的な観点を活かして、本日はお話をさせていただきます。

私たちレクシスネクシスは、法務・ビジネス情報ソリューションを提供するテクノロジーカンパニーとして、「法の支配(Rule of Law)」を掲げ、"Shaping a more just world(より公正な世界を構築すること)"をビジョンとしています。

また、世界各国で法律情報や企業情報、知的財産情報など多くのデータを収集して、社会課題の研究や市場変化に伴う企業活動を、情報面からサポートしています。そして、「リーガル・ソリューション」「グローバル・オペレーション」「コンサルティング・サービス」という3つの強みを活かし、お客様の課題解決に取り組んでいます。

「グローバル・オペレーション」という組織体制で、アメリカ、イギリス、中国、フランス、中東など、世界150ヵ国以上でさまざまな規模の企業に対し、法令データベースや各国の規制・摘発情報、企業情報、ニュース、法務支援ツールなどのソリューションを提供しています。

日本国内においても3つの強みを活かしたサービスを提供し、『LexisNexis® ASONE』というソリューションを開発・提供しています。

『LexisNexis® ASONE』は、コンプライアンスのPDCA(Plan-Do-Check-Act)の各セクションで効果を発揮する製品で、後ほどご紹介する『LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ』の基盤となるプラットフォームです。このサービスは、国内の法令遵守におけるベストプラクティスと言えるものです。

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AIやChatGPTと法規制に関する海外の動向

ここで、当社のソリューションである規制リスクの予測分析情報配信サービス『MLex』のレポートから、一つ紹介させていただきたいと思います。

2023年4月にワシントンで開催された『Global Privacy Summit 2023』では、生成AIとその規制に関して、個人情報保護の観点から多くの議論が行われました。

同サミットにおいて、 「『AIは規制されていない』という考え方は、コンプライアンスに無関心な一部の企業を助けることになる」 、と米国連邦取引委員会のアルバロ・べドヤ氏はコメントしています。

また、パネルディスカッションやネットワーキングなどのセッションでは、AIチャットボットChatGPTが大いに注目を集めました。

そのなかで主に議論となったのは、「Open AIはどのようなデータを収集して、どのようなモデルを構築したのか?」 「市民のデータがChatGPTの学習に使用されることに、適切な同意を得ているのか?」 「AIチャットボットは、その生データから個人識別情報を適切に取り扱っているのか?」などです。

また、現在、世界各地でさまざまな動きが見られます。韓国の個人情報保護委員会のTop EnforcerであるKo Hak-soo氏が、「ChatGPTの学習AIが、どれだけ韓国からのデータを含んでいるのか、もう少し詳しく調べようとしている」と、MLexの独占インタビューで答えています。

また、個人情報保護の観点で一時的な禁止令を今年3月に発令したイタリアに続き、EUをはじめとした世界各国でも規制の声が高まっています。

日本における最新テクノロジーと企業法務

一方、日本の市場を見てみますと、そもそも日本は積極的に最先端のテクノロジーを導入する国としてよく知られています。

過去に遡りますと、明治時代、鎖国の時代、さらに遡った聖徳太子の時代でも、日本は最先端のテクノロジーの発展を非常に歓迎する姿勢があり、技術的なイノベーションに対して深い関心を持っていました。

最新の技術の発展も、まさに日本のDNAの一部だと言えます。皆さんご存知の通り、日本では生成AIやChatGPT、人工知能などの技術の導入が非常に活発に進んでいます。GPT機能を導入する企業や自治体も相次いでいます。

アメリカの企業GoogleのAIも、40カ国語のうち、日本語は優先的に開発すると発表しています。

このように、日本の市場ではさまざまな分野での革新が進んでいることがわかります。「新しいテクノロジーに対して、非常に最先端である証だ」と、私は考えています。

また、日本政府や経済産業省でもChatGPTやAIに関する検討が進んでいるなか、「ルールを設けるべき」という意見が出ています。

岸田総理大臣も、先日の日本経済新聞のインタビューで、「ポテンシャルとリスクをどう考えるかのバランスが大事である」と指摘しました。また、「一部の国で禁止すべきという議論があるなか、活用の流れを止めるのはなかなか難しい。どう付き合っていくのかの問題だ」という考えを示しました。

確かに、バランスは非常に大切だと思います。テクノロジーの進化と、法規制のスピードのギャップが課題となっています。特に、最先端のテクノロジーは高いリスクも伴います。たとえば、暗号資産やオンラインゲームの分野でさまざまな問題が発生しています。

「問題が発生してから、規制が定まる」という傾向がありますが、社会への導入を考えると、規制への対応が不可欠であり、それに伴って法務・コンプライアンスセクションに対する期待も高まっています。

このような状況のなかで、企業の現場でのコンプライアンスの取り組みに目を向けてみましょう。

法規制の制定改正には時間がかかるため、企業は自身でコンプライアンスのステップを踏む必要があります。国の規制を待つ余裕はなく、急速にテクノロジーが進んでいるため、早急に対応しなければいけません。特にグローバル展開している企業は、その傾向が顕著であると考えられます。

日本企業のリソース不足を解決するために

ここからは、私たちが発表する『LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ』についてお話ししたいと思います。当社がこの製品の開発を進める必要があると考えたきっかけは、2021年に当社が企業のチーフリーガルオフィサー向けに実施した調査です。

この調査は、米国司法省が2020年に改定した「企業コンプライアンス・プログラムの評価ガイダンス」を受けて、日本企業とアメリカ企業のコンプライアンス対応状況を比較するものでした。

調査の結果、アメリカ企業は、改訂されたガイダンスに積極的に対応し、ガイダンス対応のためのリソースを確保するなど、進んだ取り組みを行っていることがわかりました。

それに対して、日本企業は「リソース不足」の慢性的な問題に直面しており、コンプライアンス体制や、運営における整備が遅れていることが明らかになりました。多くの企業が「ヒト・モノ・カネという、すべてのリソース不足」によって対応が遅れている状況です。

調査結果全体を通して、経営幹部からのコミットメントが非常に高いことがわかりました(下図の左下部分参照)。

一方で、現場では、リソース不足が課題となっています。そのため、ツールの導入が有益であると考えられます

2021年に調査したチーフリーガルオフィサーからの声や、当社で見てきたコンプライアンスの現場の状況から、さらに幅広く企業で働く皆様の意識などを見ていきましょう。

当社が2023年3月に行ったコンプライアンスの実態調査では、左のグラフにあるように、全体の7割近くがコンプライアンスを意識していることがわかりました。その一方で、右のグラフのように、コンプライアンス担当者の設置などの体制の構築については、約半数という結果が出ています(下図参照)。

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ここでも、先ほどのチーフリーガルオフィサー向け調査レポートの課題として挙げられていたリソース不足が影響を及ぼしていることが明らかになっています。

これらの状況を受けて、私たちは、コンサルティング・サービスで培ったノウハウを凝縮して、より多くのお客様にサービスをご利用いただけるようにコンプライアンスの効果測定の自動化を目指しました。

そして今回、機能追加とともに新しくなった『LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ』を正式版(製品パッケージ版)として発売することとなりました。次のセッションで、『LexisNexis® ASONEコンプライアンス・サーベイ』がどのような製品で、何ができるのかをご紹介させていただきます。

<中編に続く>

関連情報

レクシスネクシスでは、法務コンプライアンスの様々な課題を解決する為のソリューション、『LexisNexis® ASONE』を提供しております。ASONEは機能別に複数のモジュールで構成されています。

LexisNexis ASONEコンプライアンス・サーベイ』は、当社コンサルティング事業において様々な企業で実施してきたコンプライアンス・サーベイ(コンサルティング/カスタマイズ版)を標準化し、ASONEに搭載した製品パッケージモデルです。2022年に一部機能を開放した先行リリース版を発表。2023年5月には「業界/他社水準などの比較機能」や「教育プログラム(オプション)」など、分析機能を大幅にアップグレードした正式版の提供を開始しています。

ASONEコンプライアンス・サーベイは自社のリスク特定や分析、サーベイ施策の工数削減など、多くのシーンで効果を発揮します。

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